「ぬ」「かな」の深さ

昨日、11月11日はpolysicsのライブたったんだよねえ。
自分は必死こいてテストやってたよ、テスト。くっだらねぇ。
せっかく近場でやるんだから行きたかったわ。嗚呼、後悔。


で、polysicsといえば、何やらexciteでブログが始まったそうです。
その名も、「POLYSICSのできぬかな」。
できぬかな・・? できぬ・・? できぬ・・・? ( ̄-  ̄;)・・・
一見分かりそうで難解な言葉だなあ。ここからちょっと考察。


まず、「できぬ」と「かな」とに大きく分けることにする(まさかここで「できぬか」や「きぬか」、「ぬか」で一単語だとは思わないだろう。念のため。)。
第一に「できぬ」の部分だが、単語で切るとすれば「できぬ」か「で/きぬ」か「でき/ぬ」かに分かれる。
そしてそれぞれを順に、A,B,Cと置くことにする。
まずAの場合。とりあえず「できぬ」をgoo辞書で調べてみる。
すると、検索結果は0件。ということは「できぬ」という単語は無いため、Aは不適であることが分かる。
次にBの場合。
こうすると区切りがなんとなくおかしく思える他、訳すと意味が通じなくなってしまいそうなので、おそらく不適であるだろうが考察してみる。
まず、「で」をgoo辞書で検索してみた。検索結果は7件。
ざっと見ると、主な用法として、接続助詞、助動詞、格助詞などがある。
常識的に考えて、Bの「で」は上のどの用法にも当てはまらない。調べなくとも分かる。
よって、Bも不適である。
ということは必然的にCの「でき/ぬ」で分けられることが分かった。
次は「でき」と「ぬ」の用法である。


「でき」をgoo辞書で調べてみると、ドンピシャ、1件。下、引用。

(1)できること。できあがること。
「今―の品」「―高」
(2)できあがったもののようす。作られ方。でき具合。できばえ。
「昔の物は―が違う」「いつもより―が悪い」「上―」
(3)農作物の実り具合。収穫。
「米は七分の―だ」
(4)釣りで、魚が孵化(ふか)して一年以内であること。当歳。
「―ハゼ」
(5)よくできていること。
「是も―でござる/狂言・角水聟」
(6)接頭語的に用いて、一時的に生じたこと、急になり上がることの意を表す。
「―心」「―分限」


三省堂提供「大辞林 第二版」より

例文を見ても分かるように、名詞として使っている。
ここで「できぬかな」というタイトルを意味的に捉えると、(1)が似合うのではなかろうか。
よって「でき」の意味は(1)の「できること」とする。
問題は「ぬ」である。
「ぬ」をgoo辞書で検索してみる。結果は7件出てきた。

「寝る」の意の「ぬ」。「玉」の意の「ぬ(瓊)」。「野」の意の「ぬ」。
「沼」の意の「ぬ」。「打消しの助動詞「ず」の終止形又は連体形」の「ぬ」。
「完了の助動詞「ぬ」の終止形又は連体形」の「ぬ」。

これもパッと見ると、動詞と名詞の「ぬ」は意味的に考えて無いだろう。
そうするとこれまた必然的に、打消しの助動詞「ず」、又は完了の助動詞「ぬ」の二つに絞れる。
「本当に助動詞なのか」と思うが、助動詞は「用言や他の助動詞に付いて、これにいろいろな意味を加えて叙述を助けたり、名詞その他の語について、これに叙述のはたらきを与えたりする」という条件があり、この場合「でき」という名詞の下についているので条件はクリアしている。よって助動詞で間違いない。
では、この「ぬ」は打消しと完了と、どちらなのだろうか。
「○○ができぬという言い方があるから打消しだろ」などとトートロジーを並べて悦に入る浅薄な人間もいるが、
それは思考停止に他ならず、知性の敗北以外なにものでもない。
ここで都合上、「かな」に注目してみることにしよう。


「かな」をgoo辞書で検索してみると、4件出てくる。*1

「糸」の意の「かな(縢)」。「平仮名・片仮名」の総称である「かな」。
「終助詞」の「かな」。「連語」の「かな」。

これもパッと見ると、後者2つの「かな」が意味的に近いのではないか。
これを考えると、「終助詞」の「かな」か「連語」の「かな」に絞れる。
この2つに絞れる理由はもう一つあり、それは終助詞にしろ連語にしろ、
体言又は動詞・形容詞と同じ活用型の助動詞の終止形か連体形につくという条件がある。
タイトルを見てみると、きちんと上に「ぬ」という終止形か連体形の助動詞がきている。
ということは「終助詞」か「連語」の「かな」で間違いは無いだろう。
ちなみに、「終助詞」の「かな」は

(終助)
〔係助詞「か」の文末用法に詠嘆の終助詞「な」が付いてできたもの。中古以降の語〕体言およびそれに準ずるもの、活用語の連体形に付く。文末にあって、詠嘆・感動の意を表す。…だなあ。…なあ。
「うたてある主のみもとに仕うまつりて、すずろなる死をすべかめる―/竹取」「まつ人にあらぬものから初雁のけさ鳴く声のめづらしき―/古今(秋上)」「あぱれ剛の者―/平家 8」
〔(1)上代には「かも」が用いられた。(2)現代語でも、「惜しい」「悲しい」など一部の形容詞に付けて、「…なことに」といった意味の慣用句を作るのにわずかに用いられることがある。「悲しい―、子供の力ではどうすることもできなかった」。また、「素晴らしき―、わが人生」などのように、文語的表現として用いられることもある〕


三省堂提供「大辞林 第二版」より

「連語」の「かな」は

(連語)
〔終助詞「か」に詠嘆の終助詞「な」の付いたもの。近世江戸語以降の語〕文末にあって、体言または体言に準ずるもの、動詞・形容詞およびそれらと同じ活用型の助動詞の終止・連体形に接続する。
(1)軽い詠嘆の気持ちを込めた疑問の意を表す。
「あの人はひとりでうまくやれる―」「どうしてそんなに怖いの―」
(2)自分自身に問いかける気持ちを表す。
「お茶でも飲もう―」「もうそろそろ向こうに着く時分―」
(3)(「ないかな」の形で)願望の意を表す。
「だれか来ない―」「はやく帰らない―」


三省堂提供「大辞林 第二版」より

といった意味である。
これもまた複雑でタイトルを意味から考えてみると、
「だなあ」でも「かな?」でもどっちでもいいような気がする(多少後者っぽいが)。


という訳で、ここまでをちょっとまとめ。

打消しの助動詞の「ぬ」・・・(a)
完了の助動詞の「ぬ」・・・・(b)

終助詞の「かな」・・・・・・(c)
連語の「かな」・・・・・・・(d)

と分ける。
そして(a,c),(a,d),(b,c),(b,d)と組み合わせて、タイトルを全訳(多少意訳)してみる。
結果、以下のようになった。

(a,c)の場合:「POLYSICSのできないんだなあ」「POLYSICSのできないなあ」
(a,d)の場合:「POLYSICSのできないかな?」「POLYSICSのできないかな」
(b,c)の場合:「POLYSICSのできたんだなあ」「POLYSICSのできたなあ」
(b,d)の場合:「POLYSICSのできたかな?」「POLYSICSのできたかな」

・・・(;´ロ`)?
個人的には(b,d)の場合が一番しっくりくるけど、どうなんでしょ。
「つうか普通は(a,d)だろ」とか「いや、お前文法の解釈が間違ってるぞ」とか
「知ったかしてんじゃねえ」とか「なげえ」とかそういうのはスルーの方向で。
結局これを書いてたら夜中の4:00になってしまった・・。
寒いし、眠いし、まあ明日は休みだからいいけど。
さて寝るか。ここまで読んでくれた方がいたら、貴方はきっと出世する人間だと思います。

*1:「かな」を単語に分けると、「か/な」という風に分けることが出来るが(「か」は疑問の係・終助詞であり、「な」は詠嘆の終助詞)、便宜上、分けないことにする。